タイムリミット
なんたって18才のシュー太郎氏が先日人間換算で89才となる節目にまたもやケーキでお祝いしてご長寿起爆剤を投入した。
みんなをのけぞらせるほどの食欲と食いっぷりは、なんだかこのままずっと生きているのではないかと思わせる。
そんな矢先の今週月曜日、書き物をして猫背がちな姿勢を解消するため、ボルスターを背中の下に置いてリストラティヴポーズで休憩中、シューを抱き上げてお腹の上に乗せたところ。
あれ? ノドの辺りの毛が一部長いな。
二日ほど前にバリカンで刈ったところだったので、やり直そうと起き上がってよく見たところ、毛ではなく皮膚が隆起していた。触るとかなり大きい。そして触られたくなくてかなり抵抗している。
バリカンを入れたときは気づかなかった。
というか、たぶんそんな大きなしこりはなかったと思う。
これまでもハレモノというかデキモノはあったけれど、明らかにそれとは違うので、何かの腫瘍ではないかとグーグル先生に聞いてみる。リンパ腫? それとも、歯周病が進行して炎症を起こしたか?
腫瘍ならばもう少し調べてから行動するが、もし炎症で腫れているなら今行かねばとペットクリニックに行ったところ、口の中にできるメラノーマか扁平上皮だねとのこと。つまり悪性の腫瘍であるらしい。もちろん検査してみないとわからないけれど、私が検査も薬も嫌っているのを知っているからか何もせず。
高齢犬に頻発するのだそうだ。
どんどん腫瘍が大きくなって食べられなくなったり、呼吸ができなくなっていくこともあるという。だいたい3カ月、早ければ1カ月で死んでしまう子もいるとのことだった。
検査もしないのだから、抗がん剤も放射線もましてや手術など考えもしない。
そもそも元祖飼い主である母が治ると言われた胃ガンの手術をしていない、そんなうちの子だ。18才まで生きてもう十分なのに、いまさら治療のために痛い、苦しい思いをさせる必要性がどこにあろうか。
それに、考えようによっては余命宣告されたほうが、残りの時間を悔いのないように大切に過ごしやすくなる。
生きている限りいつかはこの肉体が滅びるのだから、できるだけ自然のままがいい。ただ、これからどういうことが起こるのかはわからないので、できるだけ穏やかな毎日になるよう努めるのみ。
それにしても、腫瘍が大きくなるのが早い。
たぶんあっという間に信じられないほど大きくなって、ひどい顔になったり、食べられなくなったりするんだろうなあと思っていたら、腫瘍がみつかった翌日、夕ご飯のあと歯みがきのために口の中に入れたウェットティッシュが真っ赤に染まった。それも、ドロドロ粘液タイプの血液だ。
とりあえず消毒して、止血のためにアルニカを口の中に放り込んだ。痛がる様子はなく、ぐっすり眠っているが、敷いていたひんやりマットに唾液混じりの血液のシミがついていた。
思ったより猛スピードで腫瘍が暴れているのだろうか。いつ何があってもいいように練習生に知らせておいた。
痛みのせいか夜中に何度か起きたけれど翌朝は腫れが引いていて、でも触られるのをひどく嫌がったので歯も磨かず、そっとしておいた。
弱った足腰のために血行を促進する漢方薬から気を補うものに変えて、食べられるうちにあげなければと冷凍庫に入れてあったごちそうを食べさせた。
そうしたら。
今朝は、すっかりいつもどおりのシューさんになっていた。拍子抜けするくらいいつもの。
もちろん腫瘍が消えたわけではないけれど、触れるし、歯も磨ける。またしてもあと数年は生きていそうな雰囲気すらある。以前もてんかん発作で終末期ですと宣言したことがあるので、今度も「死ぬ死ぬ詐欺」か?
そうだったらいいけれど、そうでなくてもいい。
今後このガンがどんな勢いで、どんなスピードで体を蝕んでいくのか見当がつかないけれど、シューの生きる気=食べる気、すなわち免疫力はまださほど衰えていないみたいだ。
その時が来るまで、ただ天から与えられた命の限り、生きるのみ。