お殿さまの卒寿記念旅
もうすぐお殿さまも90歳。
殿のたっての希望により、腰元や家来を引き連れておしのびの旅へ。
一時殿が体調を崩されて実現が危ぶまれたのですが、絶食で立ち直り、発作も腫瘍もなく、お天気にも恵まれて、実にありがたくめでたい1日でございました。
ときおり、家来の不行き届きで一喝の雄叫びをあげられるのですが、道中はおおむねご機嫌よろしゅうあそばされ。
最初の目的地は階段のアップダウンが多いゆえ、懐中に抱きかかえて移動していたところ、また激しくお叱りを受けまして......。自らお歩きになりたいのだそうでございます。
運動したおかげで、家来どもが食事をするときは都合よく寝ていてくださったのですが、目的地に着いたので、お休みになられたままお輿に乗っていただきました。
ところが、さすがは田舎育ちの殿。新鮮な空気には敏感で、お歩きになりたいと箱乗りしてまで訴えられるのでございました。
終始ご機嫌で動物たちにもお声がけをされたり。
馬に背後から匂いを嗅がれても、おとがめなし。
さすがに帰りはお疲れになられたようで、夕ご飯も召し上がらず、ぐっすりお休みに。
楽しんでいただけたようで、臣下一同たいへんうれしゅうございます。
どうぞお気に召すまま長生きをしてくださいませ。